序
1月末まで、島根県で「池田あきこ原画展」の催しが開かれているとのことで、平田本陣記念館を目的地にルートを考えていたのですが、かなり出雲大社に近いことが分かったので、上のようなルートに設定してツーリングしてきました。
親が働いているのに子はバイクに乗って遊びに行くというのだから、きっと、何も事情を知らない人からは「クズ」と罵られてしまいそうです。以下、そのまとめを写真と動画で振り返ります。
出雲大社まで
私は寒がりなのですが、冬場のツーリングはなぜか嫌いになれません。寒かったら乗りたくないのですが、乗ってしまいます。ピンとした空気で顔を洗うような感覚でしょうか。夏よりも景色の彩度は低く、しかも陽が短くて遊べる時間までもが限られているのですが、自分にとっては冬こそがバイクの季節だと思ってしまいます。世の中には色んなバイク乗りがいますが、共感してくれる人も少なからずいらっしゃるはずです。
寒くなるのは覚悟の上で、極楽寺山を超えて湯来へと進み、宮島口と出雲を縦断するような経路で走ることにしました。この辺りは年末年始の雪がまだ残っていて、最も低い場所で-3℃を温度計が示していました。身体の末端の感覚は消えました。うん、前言撤回、やっぱり冬バイクきらい。
とりあえず、朝ごはんがまだだったので、炭水化物とみそ汁で身体を温めることにしました。寒いところで食べる熱いもの、暑いところで食べる冷たいものは最高ですね。コンビニのおばあちゃんの「気を付けてね」のひと言は嬉しかったです。今日出会ったばかりの人に優しい言葉をかけられる人でありたいですね。
出雲に着いてからは、9号線を海を眺めながら走っていました。ずっと、こういう感じの水平線を左手に走れるいい道です。日本海側ということもあってか、風も強く、風車も立ち並んでいました。
出雲大社
出雲大社に到着しました。駐車場内に「さざれ石」が置かれています。背後に回るときちんとコケがついていました。
どこが正規ルートなのか分からないまま駐車場を出ました。実を言うと、初めて来たので「出雲大社にしては小さい入口だな。鳥居も手水場もないんだな」と、この時ばかりは考えていました。後で分かったのですが、横から失礼してしまっていたようです。
その入口の手前が「神楽殿」だったので、先にコチラから拝観することにしました。写真でも伝わると思いますが、出雲大社を象徴するかのような太いしめ縄でした。
今回も例に漏れず、絵馬を物色しました。出雲大社は「縁結び」で有名なのだそうで、当然、絵馬の内容も色恋沙汰に溢れていました。中には就職の「縁」を願う絵馬もありましたし、家族愛に溢れた絵馬もありました。
本殿に到着してお参りを済ませました。神仏の存在を信じているわけではないのですが、初詣というのは、決意表明の場として利用しない手はないと考えています。ということで、私自身も考えていることを絵馬に込めて吊るしておきました。
今回の参拝では「本殿」のみでした。不敬ですが、池田あきこ原画展のついでだったので、次回、就職が決まって気温も優しくなった辺りでゆっくり歩こうと思います。
古代出雲歴史博物館
出雲大社での参拝を終えて「池田あきこ原画展」に向かうべく、今度は出雲大社の正面玄関へと歩を進めていたのですが、その道中で歴史博物館の案内板が目に入ってきました。その原画展の開催地はココから20分程度の近所だったというのもあって時間にも余裕がありました。好奇心に従って入ってみることに。
入口までに数体ウサギの石像を見かけました。個性豊かなウサギたちで、これらは言うまでもなく、因幡の白兎がモチーフになっているはずですが、全部見つけ出して写真に収めたかったですね。
出雲大社(本殿)が日本最大であることは耳にしていましたが、ここまで大きいとは思いも寄りませんでした。現在の本殿は、当時の半分くらいの大きさとなってしまっているのですが、それでも右の伊勢神宮のそれと比べると、その差は歴然です。
ちょっとした質問を学芸員さんに投げかけると、ものすごい情報量で返してくれました。1つボールを投げただけなのに無数に投げ返されたかのように圧倒されましたが、真摯に教えていただき、その一つひとつが面白かったです。小1時間ほど同じ学芸員さんと会話していたと思います。
元英語教師である自分は、こちらの資料の閲覧にしばらく時間を割きました。彼の書く英語は静かであるものの、生々しさが伝わってきます。選ぶ語彙にも気品があり、そのオーラをまとったまま目の前の現実が描写されているからなのかもしれません。
特筆すべきは、この館内の照明についての逸話でした。その詳細は別のブログを参照していただければと思いますが、この絵は本殿の天井に7つ描かれているらしく、ご年配の学芸員さんでさえ、一度しか生で見たことがないのだそうです。知識を吹き込まれてしまったので、一般公開されることがあったら是非ひと目見てみたい。
学芸員さんの話によると、出雲は、京都などと比べると人口も小さく都市開発も進んでいないため、ちょっとでも山を掘ろうものなら、歴史的価値のある資料が多く出土するのだそうです。ちなみに、コレ、1990年代に入ってから1ヵ所で出てきた銅剣らしいです。
出雲に歴史博物館が設立された経緯は、こういった資料が湯水のように湧いて出てくるからだそうです。出土品が重要文化財に登録されてしまうと、セキュリティを備え、かつ、厳密に温度や湿度が管理された空間がなければ、国から保管を許されないのだそうです(国からの認可が降りなかったら、これらの全てが東京国立博物館へと渡ってしまう)
そこで、当時の出雲市長が「出雲で出てきた文化財だから出雲で保管すべき」と言い放ち、これほどにまで立派な博物館が建造された…という経緯があるらしい。いい税金の使い方です。いやはやなんとも、ついでに来るような場所ではありませんでした。次回は予備知識を蓄えて見学します。
池田あきこ原画展
今回の旅、本来の目的地の原画展会場に到着しました。欲張らずに最初からココだけに絞っておくべきでしたが、時間の許す限りで見学です。
日頃の行いが良いので(←あ)抽選に当たってしまいました。大抵、美術館や個展に行くと図録は買うようにしているのですが、その必要がなくなりました。代わりに、ダヤンを教えてくれた恋人にもう1冊お土産(とお礼のつもり)で買いました。
「アルス」と書かれてあるので、ラテン語由来の名前が多いのかな。ファンタジックな世界観もさることながら、この温かいキャラクターデザインに癒やされます。
サイン入り版画なのですが、1枚、欲しいなと思いました。現時点で無職の自分が言うセリフではないのですが、生涯、毎日眺められるなら「5万円なら実質タダ」と思ってしまいます。簡単なコメントと共に、原画展を振り返ってみましょう。
玄関からリビングにかけての廊下にこんな感じで絵を飾ることができたら幸せかもしれません。それほど魅力的な作品の数々でした。
さて、少し急ぎ足になってしまったのが悔やまれますが、図録では目視できない、作品の繊細なタッチと優しい色彩に心を奪われました。決して画集も悪くないのですが「生で絵を読む」時間を工面しておいて正解でした。今回は35周年記念ということなので、次回があれば40周年でしょうか。今から楽しみです。
日御碕灯台
夕日を眺めに、最後の目的地にやって来ました。東尋坊でも感じたのですが、日本海側の夕日は特に美しい。コマ送りのように太陽が沈んでいく様子に、思わず呼吸を忘れてしまうほど。
登山する必要がない灯台はありがたいです。世界100選の灯台ともあってか、食事処やお土産屋さんが多かったです。そのほとんどが閉店時間になっていたおかげで、観光客も少なく、落ち着いて歩くことができました。
時間ギリギリで灯台の敷地内に入ることができました。もう5分遅かったらこの写真は撮影できませんでした。運がいい。
管理人に「もう閉めるから外で撮影してちょうだい」と叱られました。平謝りで敷地の外に出て、ぼんやりと外で海を眺めました。いやあ…地球きれい…。真冬の日本海なので、風が強く吹き付けて来ましたが、そんなことはお構いなし。
ちなみに「八雲立つ出雲」の「八雲」は、英語で言うところの 'a lot of clouds' に当たる表現です。この場合の「八」は実数ではありません。その名の通り、たくさん雲が発生していましたが、そのおかげか、幸運の象徴である「天使のハシゴ」がかかっていました。今年はいい年になる…そう確信した旅でした。
動画
結
次年度から、初詣は時期をズラして出雲大社に行こう…と考えてしまう程度に、今回の走行経路がお気に入りとなりました。新型コロナウィルスの件がどこまで落ち着いているかにもよりますが、朝ゆっくり起きて、昼頃に出雲大社に到着して敷地内を観光し、夕日を眺め、日没を見届けたら温泉に入って高速で帰る…という計画で。
ただ、真冬の山陰道と中国道は二度と走りたくないので、お金を貯めて自動車で向かいたいですね…。無職というのは、懐の寂しさだけが難点です。それでは、次回の記事でお会いしましょう。