Kiss Kiss を読んでいる。まずは ‘The Landlady’ なのだが、その文章の巧さに感服した。彼の文章を読むのは初めてではないのだが、手に取ったのが少し日を跨いでのことだったからなのかもしれない。無駄がないのだ。
「毒殺」という語を使わずに「毒殺」を表現し、「剥製にされた」という語を使わずに「剥製にされた」を表現する。人物や情景の描写もdetail癖がある作家で、話の筋に関係のないことも違和感なく組み込む。
(毒入りの)お茶をビリーが飲んだ後、老婆の不気味さは加速する。コーヒーカップ越しに彼をジッと見つめたり、殺したことを確信するかのようなセリフがいくつも登場する。しかし、殺したことは一切描かれていない。全て読者を誘導する形で描く。蛍光ペンで引かれた線がたくさんあるくらい面白い表現がある。
ダールとは直接関係のない話だが、今日は、師匠宅で読書会であった。いつもの如くあまり発言することはしなかったのだが、居るだけでも新しいことが飛び交う素晴らしい場である。毎月を楽しみにしている会合であるのだが、これも2ヶ月後には(毎回)参加できなくなってしまう。
世の中が狂っている中で、唯一、自分が安心できる空間を提供してくれたと思う。5年くらいになるだろうか。先生が退職されてもずっと面倒を見てくれた。教材の作り方、着想、考え方、着眼点、とにかく何もかもを師匠の背中を追っては落ち込んでを繰り返して今日まで生きてきた。それでも、距離は縮まるどころか広がっていくばかり。
彼のような人間になりたい。でも、彼にはなれない。自分は自分で読むことと書く/描くことを両立するしかないような気がしている。というか、それが自分の個性なのだろうと実感し始めている。「いつかやろう」は一生やらない、という言葉を頂戴したので、思いついたら行動することを習慣化してしまおう。後悔のない選択をすることが今年の目標でもあるのだから。