序
10連休最終日にようやく休日を得ました。また、連休明け初日が神戸で仕事となっていたので、この日に観光して宿に泊まり、朝ゆっくりと出勤しようという企みで三ノ宮に降り立ちました。
主たる目的地は北野異人館です。中華街や港の方は夜にでも散歩しようかなという考えでした。神戸に来る時はいつも学会の関連で最寄り駅が六甲道か尼崎だったので、三ノ宮は予てから行きたいと思っていた場所の一つでした。数年越しに実現できたので(身体こそは悲鳴を上げていましたが)ワクワクしていました。※長い記事になってしまったので流して読んでください。
北野異人館
ということで異人館に向かっていたのですが、立っているポール全てに上の写真のような図柄が彫ってありました。面白いです。つい1枚ずつ写真を撮って行きたくなりますが、おびただしい数あったので眺めるだけに留めました。
旅に出た時には↑こんな感じでご当地マンホールの図柄を見るのが楽しいのですが、ポールの1本ずつに図柄があるのは(記憶が確かなら)今までに見たことがなくて新鮮でした。注意して見てみるものですね。
急勾配をゆっくりと歩いて登っていると、異人館に近づきつつあるような建物が見えてきました。内部までは分かりませんが、シルバニアファミリーの家をそのまま住めるようにしたかのような佇まいです。
異人館に到着したところに観光案内所があるのですが、そちらで洋館7棟分の入場料をまとめて払うことが可能です。本来であれば4000円を超える料金になりますが、ここで購入すると3000円ポッキリで拝観できるのだそう *1。
受付の人によると、2時間少々あれば一周できるということでしたが、この7棟を周るだけでも半日かかってしまいましたし、それでもまだ時間的には物足りなさを抱いてしまったので、時間も多めに見繕って拝観料を支払うと良いように思います。もちろん、観たいところだけ入場料を支払う方法もあるので、そこは好みの問題。
トリックアート美術館
最初に目に飛び込んできたのがこのトリックアート展。好きな画家の1人にマウリッツ・エッシャーが挙がるので是非とも拝観したかったのですが、長蛇の列になっていたので諦めることにしました。少し楽しみにしていただけ残念です。
こちらの絵は平面に描かれているはずですが、特にシルクハットを咥えた白いネコが本当に飛び出しているかのようですし、日傘を差している婦人の背景は奥に空間が広がっているかのように錯覚してしまいます。ここに入ったらそれこそしばらく出て来られなくなりそうでしたし、今回は壁の絵だけで雰囲気を味わうことにしました。また今度。
英国館
かの有名な『シャーロック・ホームズの冒険』を模した建物になっています。私が英語を集中して勉強していた頃には特にお世話になった本なので思い入れも深く、一つひとつの展示を噛み締めながら、本の中の世界を体験することになりました。
なんとなくで来ている観光客やカップルが居て、それはそれで楽しそうにしていましたが、イメージの世界が実体化しているのでやっぱり作品を読んだ上で来る方が面白いように思います。他の写真は非公開。足を運んでみてください。
洋館長屋
お次はフランス様式の異人館です。ルイ・ヴィトンのトランクとアール・ヌーヴォー時代の家具やガラス工芸品の数々が展示されていました。
アール・ヌーヴォー(Art Nouveau)とは、フランス語で「新しい芸術」を意味しており、花を始めとする植物などのモチーフと自由曲線を組み合わせることによる装飾が特徴で、日本の浮世絵なども西洋に積極的に取り入れられたこととしても知られています。エミール・ガレが好きな人にはたまらないかもしれません。
ここを眺めるのに小1時間を費やしたように思います。そこまで広くない展示のはずが濃い内容だったので仕方ありません。
ベンの家
ここは、狩猟の名手だったベン・アリソンの自宅だったとのことです。海外の貴族というのはなぜ狩りを楽しむのでしょうね。とは言え、日本人も徳川家康や西郷隆盛なんかが狩猟好きとして歴史に名を残していますが。余談ながら、英単語の‘game’には「動物の肉」を表すこともあったり。
個人的に好きだったのはハクトウワシの剥製でした。アメリカ先住民族の暮らしぶりを復習できたので、これもまた良い勉強になりました。
神戸北野美術館
まだ3棟しか見学していなかったのですが、たくさん歩いたので休憩です。美味しくいただきました。
坂の上の異人館
なぜお金持ちは急勾配に家を建てたがるのか。ここ山手も例外ではありませんでした。ここをまっすぐ歩くこと10分弱、息を切らしながら到着したのが坂の上の異人館でした。
中国様式の異人館でした。一時期、中国領事館としても利用されていたとのことです。そういえば、東洋式の建物はここくらいかもしれません。
中国において龍は神聖な動物であることは認知されているように思いますが、指の数によって格付けされていることはあまり知られていないような気がします。この龍は5本指なので最高位の龍。即ち、この壺は恐らく王室に置かれていたと推測できるわけですね。
北野外国人倶楽部
ここは外国人専用の社交場だったとのことです。当時の‘club’ですから、会員制の舞踏会でも催していたのでしょうか。そんなことを考えながらゲートを潜りました。
私の興味を引いたのは、使用人の部屋でした。貴族が生活する場所の裏側に居を構えるのが普通なのですが、そんなに酷い暮らしぶりではなかったのではないかと思えてきます。天井は低かったですが。
ここでは当時の衣装を着て「撮影」することができるのだそうです。丁度、自分の前に入館していたと思しきカップルがいたのですが、その女性が息を呑むほどの美しさでした。不審者になるのを覚悟でしたが、しばらく見惚れていました。悲しくない、悲しくない…。
山手八番館
アフリカのプリミティブアートであるマコンデ彫刻が展示されていました。また、ガンダーラ仏像の展示など、宗教色の強い異人館でした。仏像というのも彫られる地域によって顔立ちが現地人に寄ってくるのが印象的で、特に、ガンダーラ仏像はギリシャ人的な顔立ちをしていました。
男性は向かって左側、女性は右側に座ると願いが叶うのだそうです。パワースポットと呼ばれることに抵抗があったのですが、一応「みんなが病気せず幸せになりますように」と座って願い事をしておきました。幸せになって欲しいです。
ウロコの家・展望ギャラリー
最後はうろこの家です。展望台ギャラリーは向かって左側の建物。また、写真左手のイノシシは、鼻を擦ると運気が舞い込んでくるそうです。ブロンズ像なのですが鼻だけが金色に光っており、私利私欲にまみれた多くの観光客に触られてきたのだろうなと思わせられます。
展望台ギャラリーの方は、小さな美術館として利用されていました。日本やヨーロッパの現代絵画が幅広く展示されていました。
個人的に嬉しかったのがベルナール・ビュッフェの絵でした。私の好きな画家です。まさかここで出会えるとは思いもよりませんでした。
風見鶏の館
7棟の異人館を拝観した後で休憩です。重い荷物を持って立ちっぱなし歩きっぱなしだったので、神戸名物のビーフカレーをいただきました。赤ワインで煮込まれた牛のスネ肉が美味でした。ラストオーダー前に申し訳ないです。
一息ついたところで、夕方から雨の予報になっていたので、中華街を経由して早めに宿へ向かうことにしました。後編に続く。
後編
*1:他にも多く洋館は建っているのですが、現在も居住者がいたり、商業施設となっていたりする洋館については、この3000円に別途料金が上乗せされるような感じになりますので、本当に全て入館しよう考えている人は、ざっとでも5000円は下らないくらいのお金がかかります。