‘persona’ は、様々な文脈で用いられる語である。一般的には、心理学者ユングが提唱した「表面的人格」の意味で使われる傾向にあるだろう。源流をたどれば、この単語がラテン語の意味における「演劇の役割」や「仮面」を出発点に、少なくとも約800年以上前に中期の英語に吸収され、後の「人間」を意味するpersonという語になっている(『ランダムハウス英和大辞典』第二版)。
この単語の語源が裏付けているように、世間とは、仮面をかぶった人間の作り上げる空間であると云えるだろう。そこでは、皆、互いに本当の自分と見せかけの自分の二面を巧妙にやりとりしながら日々を暮らしていると考える必要がある。
Roald Dahl の短編 Parson's Pleasure における ‘parson’ は、‘person’ のdoublet であり、Dahl は、読者に対して夢油断することのないよう登場人物らに上のことを語らせしめているのである。